補助金が採択されたあとに、計画を止めたことがあります。

投資規模は約1億円。
私自身が関わって組み上げた計画でした。

何を止めたか

2021年2月、地方で複数の店舗を運営する事業者から、新しい業態の店舗を建てる相談を受けました。

想定投資額は約1億円。実施は1年以内。
事業再構築補助金を使う前提で事業計画を整理し、申請しました。

結果は採択。補助の対象は約6,000万円です。

用地の取得、近隣住民への説明会の実施、行政の手続き、備品の手配まで、準備は進んでいました。
それでも、実行には移さないと判断しました。

当時の前提

  • 補助金には、厳しい実行期限がある
  • 事業計画は、当初の建設費の見積もりを前提に組んでいた
  • 代表者は高齢で、計画が長引くほど事業承継が難しくなる
  • 既存の事業で、コロナ禍を乗り切れる体制はできていた

最後の1つは大きな前提でした。
(低金利・利子補給付きの円滑化資金等の活用も行っていた)
この計画をやらなくても、現時点では会社は急には傾かない状態だったわけです。

分かれ目:建設費が約2割上がった

建設の準備を進める中で、ウッドショックによって資材の価格が急に上がりました。
見積もりを取り直すと、建設費は当初の計画から約2割増える見込みになりました。

選択肢は3つありました。

  • A:建設費の増額を受け入れ、補助金を使って実行する
  • B:計画を中止し、補助金を辞退する
  • C:計画を練り直し、補助金を使わずに実行する

私が見たところ

問題は、約2割という増額そのものより、条件の組み合わせでした。

コストは上がる。
でも、補助金の期限は動かない。

期限がある以上、計画を見直す時間は取れません。
上がったコストを抱えたまま、見直しをせずに走ることになります。(A案)

計画が長引けば、代表者の年齢を考えると、事業承継のリスクも上がります。

補助金とは別に、自己資金で約4,000万円を出したうえで、この状態のまま走る。
私はこれを、決めるべきことを決めないまま走り出す形だと考えました。

では、C案:補助金を使わずに練り直すのはどうか。
補助金がなくなれば、自己資金の負担もリスクも、さらに大きくなります。
その状態では、なおさら進められません。

見積もりを取り直した翌日、打ち合わせの場で、私はこう伝えました。

コストが上がったのに、補助金の期限があるので、計画を見直す時間がない。
この状態で走り出すのは、やめた方がいい。

すでに進んでいた準備の重さは、お互いに分かっていました。
事業者はこの判断を受け止め、計画は実行しない方針に決まりました。

選んだのはBです。

結果

新規事業は実行されませんでした。
取得していた用地は約3年後に売却し、金銭的な損失は出ていません。

避けられたのは、次のものです。

  • 補助金以外に必要だった、自己資金 約4,000万円の投資
  • 判断を遅らせることによる時間の損失
  • 計画が長引くことによる、事業承継のリスク
  • 実行したあとでは修正がきかなくなる状態

今ならどう見るか

補助金は、採択された時点で「やる理由」に見えやすいものです。

ただ、補助金はお金と一緒に、期限と条件も連れてきます。
条件が変わったときに見直せない計画は、準備がどれだけ進んでいても、一度止めて考えた方がいい。

私は今も、そう考えています。


集客でも、同じように「やらないこと」から決めています。
→ 90日 集客立て直しプラン(44,000円・税込)

WEBマーケティング熊本 代表 大橋 満

税務会計事務所・企業経理などで20年以上、経理・決算・事業計画・資金調達等の実務に携わる。 現在はその経験とWebマーケティングの実践を組み合わせ、中小企業・店舗の「何に時間とお金を使うべきか」を、売上・利益・集客導線から整理する支援を行っている。

関連記事

TOP